江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第78回「中華料理」  江本昌子公式ホームページ

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著者:江本昌子

第78回「中華料理」

毎週木曜日更新

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余命一年と宣告され我家に帰ってきた母は 骸骨のように痩せ細っていた。父は 母が少しでも元のふくよかな京美人に戻ってもらいたくて あの手この手で栄養を付けさせようと腕をふるう、 しかし受け付ける体力も落ちているのか ほんのひと口 口にするともう御馳走さまと箸を置く。「食べんと元気にならんぞ」と言うのが口癖になってしまった。
父の得意料理は中華料理、上海時代の現地の料理長直々の味、白身魚の唐揚げ野菜あんかけソースかけは絶品中の一品。甘酢あんかけが酸っぱ過ぎず甘過ぎず、それでいてハッキリした味で白身魚によくからむ。そんな父の好みもあって母が居るあいだ中華料理の美味しい店に一家でよく出かけた。中国の方がオーナーで趣味の油絵が壁いち面に飾ってある。東洋のシャガールとあたわれ その独特なデッサンは幼い私には芸術を理解するには難しすぎてさっぱり解んなかった。
大きな円卓に家族がぎっしり座り 熱々の料理を回して食べる中華の美味しいこと。母もここならいつもより食べれるようなので父は上機嫌、父の口癖も聞けずにすむ。四川、北京、広東、上海、台湾と中華も色々あるが父が上海料理と断言するのでハイと皆で頷いた。ベッドに横たわってる母が元気がないと父はすぐ中華を作り出す。台所を煙だらけにして こってり油っぼい中華を出しても、しば漬け すぐきの 美味しい漬物にぶぶ漬けで育った京女の母には辛いものがあったに違いない。
それでも時間をかけて少しづつ少しづつ量を増やしていく母も一生懸命生きようと努力していたのであろう、家族の愛は そのまま母の栄養となり宣告された余命を三年も越え家族と交えることができた。先日 兄弟全員で行った京都で昔食べてたあの美味しい中華料理にめぐりあった。京料理を堪能し西と東に別れる前に皆で円卓を囲み 「美味し〜!うまぁ〜い」と歓声をあげ完食!母の故郷京都の上品な京料理も好きだが やっぱり うちの兄弟の舌は父の遺伝子の方が勝っているようである。



Hiroko Live → http://www.youtube.com/watch?v=QcbehEi7CjE&NR=1

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