江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第49回「机」 江本昌子公式ホームページ
江本昌子の
著者:江本昌子
第49回「机」
毎週木曜日更新
作者へのお便りをお待ちしてます。
        ↓
父は7番目にやっと出てきた待望の長男、修を目に入れても痛くないほど溺愛した。 
ま、そうなるのも当然のことかもしれない。 
それまで勉強机なんて見たこともなかった家に、ドガーンと立派な机を与え、小学4年の時から家庭教師をつけた。 
無学な父が京都で最高学歴まで進んだ母へ劣等感を持っていたのか、 
長男には教育を惜しみなく与えた。 
週2日、兄のこのマンツーマンの授業になぜか私も入らされ、受講する訳でもなくただ横で一人違う勉強をたんたんとしていた。 
たまに私が算数の応用問題が解けずに難しい顔をしていると教えてもらえたりしたけれども、ほとんどが兄の勉強の指導で費やされていた。 
兄の勉強机はどこの社長さん?って位重厚な机で、イスもふかふかで下にコロが付いている。 
蛍光灯をガンガンにつけ、兄と家庭教師が頭をくっつけ勉強に取り込んでいるその横に鎮座ましますダンボールのみかん箱の私の机。 
あれ?寺子屋? 
兄の筆箱は鉛筆1ダース12本入りの上下二段の豪華版。 
特大消しゴムも入るし、鉛筆削りまで付いている。 
それに比べて私のは鉛筆3本入ったらいっぱいの箸入れかい? 
って間違えるほどの華奢なセルロイドでできたペラペラのケース。 
当然大きい消しゴムなんて入る余地なく、まん丸に小さくなった兄のお古。 
これがまた転がると探すのが大変。 
父の愛情の甲斐あって、兄は有名進学校を受かり東京の大学へと進むことができた。 
やっぱり教育というのは大事だなあと思う。 
寺子屋まちゃこのほうはどうかというと、まん丸消しゴムを転がして遊びすぎちゃった。 
ローリングストーンズ、転がる石はどこまでも。 
仕方ない、私にはこのほうが似合っている。 
それに、人が何と言おうとも波乱万丈の人生が大好きで仕方ないのである。