江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第46回「宝塚歌劇」 江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第46回「宝塚歌劇」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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宝塚歌劇は大好き。豪華絢爛。美しくて素敵な世界へと連れてってくれる。二年前五女のまい子姉とお気に入りのトップスターさんの千秋楽を観にいった。

宝塚駅を降りて劇場のほうへ向かっていると目の前のエスカレーターで大きな荷物が邪魔なのか乗るタイミングを計っている女の子と遭遇した。よく見るとどうやら片足が不自由な様子。
「一緒に乗りましょうか」と、声を掛け、彼女の荷物を預かり、同じ段によいしょっと乗った。
「宝塚見に行くの?」
「はい、東京から来ました」私は山口県、姉は愛媛の松山から、そして彼女は東京から。宝塚ファンは皆熱狂的やなあ。エスカレーターを降りる時、彼女の左足が全然動かないことに気が付いた。
「ありがとうございました。お先にどうぞいってください。わたしはこの通り時間がかかりますので。」と、言われ、私たちは先を急いだ。

涙、涙の千秋楽も終わり、今度はスターさんを見送る為、劇場の外へでるとモハヤものすごい人、人、人。
これじゃあ、人の頭しか見えない。何が何でも見たい私たちはいい年をして近くの木によじ登り、スターさんが出てくるのを待っていた。「あ、彼女だ!」朝、エスカレーターで逢った女の子と目が合った。
「私もスターさんを見たいのですが新幹線の最終の切符を取っているので帰ります。」と、残念な言葉。まだ明るいというのに彼女の足ではそうなんだ。
「それではね〜」と、その場で別れたが、人ごみの中を大きく肩を左右に揺らしながら一歩ずつ、一歩ずつ進んでいく後姿を見て間に合えばいいな、と心配した。

それから三ヵ月後、そのスターさんのトークショーが東京で催され、これまたミイハァの私とまいこ姉の二人はやんやか出かけて行った。大きなホテルのロビーはファンでごった返している。「あっ!あの子!」
宝塚で出会った例の女の子だ。人垣から外れた隅っこに有るポールに寄りかかるようにして片足で立っている。時間に間に合わせようと急いできたのか、ぜいぜいと大きな荒い息を肩でしている。顔を真っ赤にして汗で前髪をぬらしている。彼女にとって、力いっぱい人を魅了できる宝塚スターさんの素敵なダンスは、自分では現実ありえない夢の世界へと連れてってもらえるものなのかもしれない。
なんだか、胸がキューンっと熱くなった。彼女を動かす力、このファンの力が宝塚を90年以上も支えてるのであろう。わたしも随分元気をいただけるもの。

常日頃、金欠病で娘に「金送れ」としか言えない私だが、ここは血を売ってでもこの踊れるスターさんの舞台は観にいく!幸い、まい子姉のとこは開業医。ヒヒヒ。時々吸血鬼に見えるけど舞台の為なら吸って頂戴!
先日、健康診断の結果が出た。
「内臓はどこも悪くないけど極度の貧血です」
「ハイ。」

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