江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第41回「喫茶店」 江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第41回「喫茶店」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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茶里姉さんが成人したての頃、よく小学生の私をショッピングに連れていってくれていた。
というかくっついて行っていた。
姉がお洒落をして出かける支度を始めると、私もよそ行きのプリーツスカートと白のブラウスを持って姉の後を追いかけ回し、ねばり勝ち。
お洒落にこだわりを持っている姉は専門店が並ぶアーケード街の端から端までのぞいて回り、お気に入りの服を買うまで私の足は棒になってしまう。
やっとこさ買い求めると、待ってました。
お約束のティータイム。繁華街のド真ん中にあるメトロという甘味処へレッツゴー。
薄暗い店内には熱帯魚の水槽がいくつも並びクラッシックが流れて静かな大人のムードの高級な純喫茶。
低めのソファーに深々と座ると、さっきまでの疲れが吹っ飛ぶ。
注文したプリンアラモードがセンスよく出てきて、背筋をシャンと伸ばしてすまして食する。
生クリームホイップと調度いい甘さのプリンのコラボが最高。
横に長細いウエハースが1枚ついていて、パリッとした食感が甘さを品よくして。駄菓子屋でいつも買い食いしている人口甘味料チクロ100%の舌が真っ赤になるニッケ紙とは比較にならない美味しさ。
よそ行きの格好で洒落た雰囲気が味わえてちょっぴり背伸びして大人になれたような気がした。ざん切り頭をたたいてみれば文明開化の音がするとは言うが、まさに私にとってこのプリンアラモードは文明開化の味なのである。
茶里姉さんはいたずら好きな人だった。姉妹4人でドライブに行き、レストランで食事をして私がトイレに立ち、席に戻ってくるとテーブルに誰も居ない。しぶしぶ私が会計を済ませて車に戻ると「ご馳走様〜」なんてことしやがるの。小さいときのツケはもう払ったからね。
私が家庭を持って娘2人と喫茶店へ行くことはよくある。しかし全席禁煙となると別々に座る。喫煙席は外となると、私一人外で娘二人は店内。
透明ガラス越しに見える店内。娘が運ばれてきたオーダーの残り、コーヒー1つを外の私にへと指さして言っている。
「お待たせいたしました」とかっこいいウェイターのお兄ちゃまが置いていくのだが、なにやらブヒブヒ笑っている。
ん?そんなに私おかしい?恋に芽生えたの?まっいいか。
美味しいコーヒーを飲んで煙草を一本くゆらせゆっくりしてたら娘たちが出てきた。
「外のあのきしゃないばあさんにコーヒー持って行ってください。って言ったけど、すぐ分かったんやね」だって、こら!
女は捨ててないつもりなのに娘がさで捨ててどうする!
人生のまっとうなレールから途中下車しまくって脱線、遠回りの人生を味わっていると味覚まですっかり変わってしまった。
あのプリンアラモードに感激していた時代の素直な自分に戻りたいなぁとつくづく思った。

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