江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第22回「上海旅行」 江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第22回「上海旅行」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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今から15年前兄弟旅行で中国の上海へ行った。四女までがここで暮らしていて、第二のふるさとを生きている間にもう一度訪れておきたいという事ですぐにまとまった。この旅行には当時84歳の(第15話白寿のおば)も参加して女ばかり6人の旅。

当時の上海は発展途上いちじるしく、あちこちで建設ラッシュの真っ最中。高層ビルがところ狭しと建ち並び、高速道路の工事でほこりっぽい空気がまどろんでいた。有名な観光地だけめぐり、後はガイドさんに頼んで昔住んでいた日本人村へ案内してもらった。

四女、明子姉はまだ生まれたばかりだったのであまりピンとこないといった感じだったが、上の姉達は大喜びで、この本屋さんは昔のまんまでちっとも変わらないとか、この並木通りも当時のままと喜々としている。写真係りの私はシャッターを言われるがままに押し捲っていた。長女の近子姉と二女の三千子姉はというと、当時の空気を味わいたく二人で散策に行き「いってきま〜す」元気よく出発したはいいもの、目の前の道路を渡ろうとすれどものすごい人と自転車と道路交通法無視の車がぶんぶんっと洪水のように湧き出てきて一歩も動けずシュンッとして帰ってきた。

二日目も観光地をまわり、夜遅くにホテルに着き、すぐ食事して部屋へ入った。205号室、206号室、207号室と私たち御一行連番で部屋を割り振ってもらったと思いきや、なぜか207号室に新婚旅行の若夫婦がいて、私たち205、206、とんで208号室にと、割り振られるなんともおかしな部屋割りになっていた。そんなこととはつゆ知らず、部屋の電話でそれぞれの部屋へかけまくる私達。

207号室へかけてみた。ツルルルル〜、ガチャ
「もしもし、昌子よ〜」
「知りません。」
「え!?どうも失礼いたしました!」ガチャ
えらいこっちゃ、これは大変、皆に知らせないかん!と、隣の206号室へかけてみた。

「それい〜ね、私も今かけてびっくりしてそっちに電話しようと思うちょったいね」としゃべっている、と、
ヒステリックな京都弁のおばの声がする。
207号室の新婚さんのとこのドアおもいっきりドンドン叩いて
「何してんの!開けなさい!」と、大きな声をあげている。
あちゃ〜、遅かった。皆でペコペコ謝り倒したけど、翌朝の朝食バイキングで目の下にクマを作ったこの二人にしっかり睨まれた。スイマセ〜ン



珍道中ではあったけれども 私にとっては平和な観光旅行。叔母や姉たちのような壮絶な生死をかけた時代背景は感じ取れないけれども、よくぞ御無事で日本へ帰ってくれたことだと思うことができた。
帰りの上海空港への道すがら、屋台で揚げパンのみたいなものを売っている所を通った。
「あ〜、懐かしい〜ターピンっていうんよ。おいしいよ、よう昔は食べたなあ、、、、」と、姉たちが言っている。すぐさま車を止めてもらい それを買い込んだ。姉たちの青春の味を食べてみたい。小口にちぎって皆で味わってみた
「、、、、、」
古い油の味しか口に残らず、ちっとも美味しいとは思えなかったけれども、姉達は「これよ、これ!」と、口々に言い昔を思い出すかのようにぺろりとたいらげたのだった。


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